女性は地道に頑張っている男性に対して、母性本能をくすぐられてしまうもの。特に頑張ってもなかなか上手くいかないときは、背中を後押ししたくなる…そんな衝動に駆られる方もけして少なくはないのではないでしょうか。

今やファンが急増し、スタジアムをファンで埋め尽くしているほど人気が高まっている広島カープ。カープ女子という流行語が生まれるほどですが、その背景には広島カープ独特の地道な育成をしていくチームの方針も絡んでいるとされています。資金力ではどうしても他の球団に勝てないため、若手を育てて、強い球団に挑んでいく姿勢、それでもなかなか勝つことができない姿。頑張ってもなかなか上手くいかないことも多々あるが、強いチームに勝つこともある…そんな姿がカープ女子の心をくすぐるのでしょう。

プロ野球には1軍と2軍があり、主力選手で、テレビ中継でも放送され、大観衆の中でプレーする華やかな舞台の1軍。しかし、その一方で、2軍はそんな華やかな舞台に立つ日を夢見て、ひたすら地道に汗を流し、練習に励む舞台です。2軍でも試合が行われていますが、テレビ中継があるのはごく稀で、新聞を見ても、片隅に結果だけが小さく書かれている程度。プロ野球は華やかな印象がありますが、それとは真逆の地味な世界なのです。

しかし、広島カープの場合、育成してチームを強化していくため、2軍こそが将来のチームの行く末を左右しているといっても過言ではありません。実は最近では、お気に入りの選手を見に、2軍の試合などに足を運ぶカープ女子も増えているのです。目を付けた選手が将来のスターになることを祈りながら…。

広島カープの本拠地はマツダスタジアムですが、実は2軍にも本拠地があります。山口県の東部、今では岩国市となった由宇町です。ここに広島東洋カープ由宇練習場があります。JR山陽本線由宇駅からバスに乗るか、山陽自動車道玖珂インターチェンジで降りるか…いずれにしても、マツダスタジアムの利便性を考えると、とても辺鄙で不便な場所に立地しています。いかにも2軍…そんな雰囲気を感じるかもしれません。

また、2軍の練習はここだけではなく、広島市の西部にある廿日市市には広島カープの若手が暮らしながら、練習に明け暮れるための寮と練習場があります。JR山陽本線前空駅から歩いて5分ほど、瀬戸内海に浮かぶ宮島を眺めることもできます。当然、中に入ることは出来ませんが、運が良ければ、若手選手と出くわすこともあります。

2軍の選手は毎日、朝早くから練習に打ち込んでいます。寮生活をしている選手は特に、夜遅くまでみっちり練習に励む選手も多いのです。そういった選手の中から、お気に入りの選手を見つけ、一人前の選手になる姿を見続けることが出来る…そんな育成の楽しみもまた広島カープならではのものです。まるで自分が母親のように、また恋人であるかのように、選手が育っていく姿を追える…それが女性にとっては母性本能をくすぐられるものになるのでしょう。カープ女子が誕生した原点は、2軍で地道に頑張る選手たちの姿にあるのです。