プロ野球には12のチームがありますが、毎年シーズンオフになると、翌年に向けて様々な戦力の補強が行われます。ドラフト会議で将来が有望な新人選手を獲得したり、他球団を残念ながら解雇されてしまった選手を再雇用したり、また外国人選手と契約したり…と様々です。

こういった新戦力の獲得には資金が必要となりますが、例えばフリーエージェント(FA)選手の獲得や、近年では大リーグに渡った選手の獲得など、通常の戦力補強に比べて格段に費用がかかるものがあります。こうした多額の資金が必要な補強は、それが可能なだけの資金がある球団に偏りがちなのも、現代のプロ野球なのです。

そんな高額の費用がかかる戦力補強とはほぼ無縁の広島カープ。毎年、他球団の主力選手のFA権行使とともに、その移籍先が注目される中で、今まで一度もFA権を行使した選手を獲得したことはありません。これは現在、プロ野球12球団を見渡しても広島カープだけなのです。

しかし、その一方で広島カープの主力選手がFA権を行使して、他球団に移籍してしまったケースは幾度となくあります。その都度、広島カープは主力選手を失い、一時的に戦力がダウンし、その穴埋めを外国人選手や新人選手に託さざるを得ない状況に陥るのです。

このように見てみると、広島カープは資金面で他球団に比べて劣っているのは明白で、それだけでも不利な状況にあることは否めません。長く優勝からも遠ざかっている原因となっている側面でもあるでしょう。

しかし、そんな不利な状況であっても、自前で若い選手をどんどん育てて、はい上がっていこうというチームとしての姿勢が多くの方のハートをつかんでいます。「カープ女子」と呼ばれる女性ファンが急増している背景には、逆境にも耐え忍び、独自の路線をひたむきに歩んでいく姿に惹かれているところもあるのです。

例えば読売ジャイアンツや阪神タイガースなどは、資金が豊富であり、毎年のようにシーズンオフになると、高額の費用をかけて戦力補強をしています。しかし、広島カープはそれを行うだけの資金がないために、自分たちで主力選手を育てていくことが、プロ野球球団として生き残る道なのです。

しかし、それは資金力の球団とは違って、若手には多くのチャンスがあるということになります。戦力を豊富に補強できる球団は、どうしても若手選手は出場機会を奪われてしまいがちですが、育成することで戦力をアップしていく広島カープのスタイルは、若手でもプロ野球の主力選手になれる可能性をどこの球団のよりも高く秘めているのです。

そうして、多くの選手が1軍の晴れの舞台での活躍を目標に地道に練習に励んでいます。そのひたむきさ、そしてやがて雑草の中で育った若い選手たちが、資金力で戦力をアップしているチームに勝つ…それが、広島カープの醍醐味であり、女性にとってはそんな姿が母性本能をくすぐり、カープ女子の誕生につながっているのかもしれません。