プロ野球はかつて、ファンといえば男性が中心でした。自宅ではお父さんがいつもテレビで巨人戦を見ていた…それは昭和の定番風景とも言えました。しかし、近年はプロ野球のスタジアムにも多くの女性ファンの姿があります。しかも、「カープ女子」と呼ばれる広島カープファンの女性に代表されるように、女性の間でもプロ野球ファンが広がっているのです。

広島カープの本拠地は広島市にあるマツダスタジアム。広島カープの主催試合があるたびに多くのファンの方が観戦されています。その多くは当然、広島カープファンであり、スタジアムはチームカラーの赤一色となります。これはマツダスタジアムが広島カープの本拠地であり、お膝元であるために、広島カープファンが多いのもうなづけます。

しかし、例えば東京ヤクルトスワローズの本拠地である東京の神宮球場。このスタジアムで行われる広島カープ戦。ライトスタンドはヤクルトスワローズ独特の傘の応援が見受けられますが、レフトスタンド側はなんと広島カープファンで真っ赤に染まっているのです。外野スタンドだけでなく、内野席に目を転じてみても、明らかにスタジアムは赤色優勢なのです。しかも、いわゆるカープ女子と呼ばれる女性ファンの姿がそこかしこにあるのです。

広島カープにとっては相手チームの本拠地。にもかかわらず、広島カープファン、またカープ女子の姿が目につきます。これは神宮球場に限ったことではなく、横浜スタジアムや西武ドームなど、他の球場でも同じことがいえます。それだけ、今やカープ女子は全国的に広がり、多くのスタジアムを席巻しています。

ところで、そもそもなぜ「カープ女子」が増え、今や全国区となっているのでしょうか。そのスタートは2009年、広島カープの本拠地が広島市内中心部にあった広島市民球場から、現在のマツダスタジアムに移転したことにありました。

かつての広島市民球場は座席も狭く、スタンド自体が急斜面だったために、足元に危険を感じることもありました。野球を観戦すること以外に特段楽しめる要素もなく、女性用のトイレは数が少なく、いつも長蛇の列。現在のマツダスタジアムにはフードコートやグッズ売り場など多彩に楽しめ、施設も充実していることを考えると、かつての広島市民球場は女性にとってはけして快適な環境とは言えず、ましてや小さなお子さまを連れてはとても行けないような状況だったのです。

本拠地がマツダスタジアムに移転して以来、広島カープは女性ファンを増やすためのグッズ販売に力を入れました。その結果、チームカラーが赤だったことも追い風になり、徐々に女性のカープファンは増えていきました。当初は「カープガールズ」と呼ばれていたものの、2013年、広島カープの女性ファンが急増しているという特集がニュース番組で取り上げられ、「カープ女子」というフレーズが誕生しました。

「カープ女子」は2014年には流行語大賞にもノミネートされるほど一世を風靡するものとなりました。全国各地のスタジアムで赤一色の空間ができるように、今や広島カープの人気、そしてカープ女子という存在が今や全国区となっているのです。